Mellow Symphony Official Blog

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MUSIC AS MAGIC!! Singer Songwriter Mellow Symphony's Blog

2016/07/15

つだげんしゅ

減酒している。
先日ウイスキーに関するブログを上げたが実は先月くらいから酒の量を減らしてみることを意識し始めた。
これはなんというか若干くだらないのだが、複雑な理由で連日葛藤?しているのだ。
キッカケは僕の友達「津田くん」に言われたからだ。津田くんは日本の名字こそかろうじて維持しているものの、生まれも育ちもここカナダ。いわゆる日系カナディアンである。両親はおろか、祖父母ですら全くといっていいほど日本語がしゃべれない(けど実家の犬の名前は「まりこ」という)。
そんな彼は精神科のスペシャリスト。日夜病院内外で患者さんにより豊かな人生を送ってもらうためにタフな仕事を笑顔でこなす、正義の漢である。
彼は仕事柄、ドラッグ、酒、タバコなど各種依存性のあるものについても調べてきているそうだ。
そんな津田くんと会話しているときにふと、「酒はほとんど毎日飲んでいる」という僕のお酒好きストーリーにチラッと触れた。
すると即座に彼の目の色が変わり「しんご、毎日飲んでいるのか?どれくらいの量だ?どれくらい酔うのか?」などと訊問のような質問が続き、
「あのね、辞めろとは言わないよ。でも気をつけたほうがいいよ。」「アルコールは依存性が高い上に、健康に害を及ぼす。僕はそういう人をたくさん見てきているからね。」
と言われ、僕も一生懸命自分はただの酒の愛飲家であることを主張し、依存などしていないと自己肯定を試みたが。自分でも言いながら「依存していない」という本人の言葉ほど説得力にかけるものもないなと思い、これ以上正当性の主張をしても無駄だと諦めた。
変わりに行動で示すよりほかはあるまい、ということで始めたのが減酒である。
それから1日置いてみたり、3日に一度くらいの「休肝日」なるものを設けたり、規則性こそないが確実にアルコールを消費する量が減っている。

果たして効果というか、身体に効能をもたらしているのか?

これが正直よく分からない。

こういうのは本来日本なら健康診断でも行ったナイスミドルの方あたりが「いやぁ、ガンマじーでーぴーがなんたらかんたら…」とか言ってはじまる流れのハズである。
そうでもない限り、私のような愚かな人間は、数少ないドラッグを合法化されている日本人の一員として、割りと「ダメージが表出する時期まで」習慣的に飲んでも不思議じゃないと思う。

幸か不幸かこんな機会を与えられた以上、やるしかない。(そもそも減酒の前に運動する機会を増やさないといかん)

そしてどんどん健康的になっていく私はもう破滅型ロックミュージシャンの仲間にはなれないだろう。

それに対する罪悪感というか、ロックに対する後ろめたさのようなものすら若干感じながらも私の減酒は、著しいかたちではないながらも気ままに、ゆるりと続くのである。

2016/07/06

本物に出会う

5月の初旬頃だったか、随分日が経ってしまって細かいことがうろ覚えになってきているのだが、印象的なじいちゃんにあったことを記録しておきたい。

帰り道、酒屋に寄ったときのこと。トロントでお酒を買えるところは限られている。例えばウイスキーが買いたかったから行くべき場所は一か所しかない。LCBOと呼ばれるリカーストアである。
売ってる場所が一か所ってのは価格競争が生まれにくいから、不健全じゃないのかねぇ、経済の仕組みとして。ねぇ、どうなの?ねぇねぇ。


まぁ、それはさておき。そのLCBOに行ったときの話。なんとなく個人的にウイスキー熱が再度盛り上がってきている気がしていた。ただのマイブームだけど。気になるウイスキーを色々試して、へぇーコレってこんな味なんだなぁってのを1人で楽しむ…という。一時期そうやってカナディアンウイスキーを結構試したのだが、久々にまた幾つか新しいのを試してみたい気持ちに駆られていた。
そこで酒屋に行き、カナディアンウイスキーを物色していたところ、なかに産地がAlberta州のものがあった。
アルバータといえば、ちょっと前にFort McMurrayというエリアが山火事によりとんでもない広範囲に火が及び、家屋などを焼き尽くしてしまうという大惨事があったところだ。
そこでなんとなく「アルバータ産のウイスキーを買ったら、少しは彼らの復興に貢献できるだろうか」などと考えて、ぼーっとボトルを手に取りラベルを眺めていた。

日本にもあるじゃないですか、「地産のものを買って、応援しよう!」っていうあれ。そんなことを考えていた矢先。
横から「ウイスキーなら、こいつが間違いない…」と全然違うボトルの前でぶつぶつ言う人がいる。

その初老の男は僕に話しかけていた。
見るとそのボトルにはハワイアンの女の子がフラダンスを踊るイラストがある。つまり明らかにカナダ産ではない。


ちなみにそういう「通りすがりの人」が突然会話をふっかけてくるのもここではよくある。カナダの人柄なんじゃないかとも思うし、人口が少なく、発展している都市とはいえ、まだ東京やニューヨークほど人に疲れていないような感じがあるからか、街を歩けばたまたま隣あった人がとても自然に話しかけてきて、相手もとても自然に会話につきあう。そんな景色はこの街の日常茶飯事である。(そして僕はそういうの人間らしくて好き)

さて、その初老。
僕の意図も知らずに、めちゃめちゃラベルの女の子がフラダンスしているウイスキーを進めてくる。
ちなみに彼はフレンドリーで酒に詳しい人…というより、ウイスキーなどの酒をかっくらって、昼間っから酔っ払うようなタイプ…の見た目をしている(見た目がそうだからといって、本当にその人がそういう人間かはわからない)。

僕の反応も待たずに、独り言と語りかけの絶妙なバランス感で彼は説明を続けている。
僕も割って入るように彼に理由を伝えて、「アルバータ州で山火事があったからっていうのもあるし、単純にこのウイスキーを試してみたいんだよね」というと彼は、「ふん。なるほどな、そういう感情的な理由で買うのも結構だが、それじゃあ本当にうまいウイスキーには出会えないぜ。このウイスキーはな、原材料にあれを使っていて…」と引き続き解説を始めた。

正直、その説明もよく分からないので「ありがとう。考えるよ。」と言って、話をやや強引に断ち切った。

その後も数分僕はウイスキー棚を眺めながら迷った挙句、結局両方を買うことにした。

よかれと思ってアルバータのウイスキーを買おうかと思ったが、おっちゃんにそこまで言われると俄然ハワイっぽいウイスキーも気になってきた。考えてみたらうまい酒を飲めるに越したことはない。


帰って、よく見たらそれはウイスキーではなく「ラム」であった。

そして飲んでみたら確かに美味かった…


あのおっちゃんは一体…