両側に開く仰々しい扉を押し開けて
移動したのは15階
窓がある部屋
部室のような、給湯室のような、
機能性に重点が置かれたような空間
よく見ればあれこれ器具が置いてあり
部屋の端にはソファもあった
「それじゃあこのベッドにうつりましょう」
と苦しむ彼女はサポートをうけながらベッドを移してもらう
「あなたの荷物はここに」と僕には木の棚を開いて見せてくれた
お、お邪魔します…って感じで
誰か入院している人のお見舞いにきたような雰囲気を感じながら
同時に
覚悟をする
どうやらここが…(ごくり)その「部屋」か。
ふとした瞬間にナースが
「あなたたちもしかして日本人?」
唐突な質問だが、はじめてのことではない。
そうだ、と答えると
「日本人のスタッフがうちには4人いるのよ。あとで一人呼んでくるわ。」
なんと意外な展開
遥か10000キロ以上離れた土地で
この深夜に
同胞がいるのなら心強い
そして
待つ
先生を待つ
麻酔技師を待つ
ナースは気がついたら部屋にいない
…ふむ?
またしても「待ち時間」ね
(あとで話を聞いたら結構同じ日に出産がたくさんあったそうな)
おくさま苦しむこと数時間
そして日本人の助産師さん登場
とっても良い人で話をしながら僕らを和ませてくれる
「私もあなたと同じ歳のとき、この部屋で産んだのを思い出したわ。」
だって。なんという巡りあわせ!これはやるしかない。
「麻酔の担当者がもうすぐ来ますから」
そしてようやく到着し、麻酔処置を施す
(いわゆる北米で定番の一つとされる無痛分娩)
効き目を待つことさらに一時間前後
何度も氷を肌に当てて効き目チェック、そして「もうちょっと待つ」の繰り返し
麻酔が効いていることを確認できた後
メイン(と思しき)先生が白衣で登場
クールな女性の担当医
病院に着いてから今まで登場した人物のなかで
一番無口で、かつ話し方もなんだかぼそぼそと話している(まさか寝起きなのか?)
そのうち助産師さんが数人集まってきた…
さあて、いよいよか!!
そしたら、えっと…
私の
立ち位置はどこですか??
気が付けば妊婦さんは
助産師さんと機材に囲まれている
私は
邪魔にならない程度にベッドに近づき
ほどほどに近づきすぎない程度に
ベッドの脇から助産師さんの肩越しに応援(するのが良さそうだと判断した)
さあいきましょう!
「いきみ方」を教わるおくさん
一度目
「ぬ゛~~~~~~~~~~~~~~~」
おお、いいですよ
上手です!!!
とか応援を浴びながら
いったん休憩…
複数回やったところで
「もう頭見えていますよ」
え、もう??
そういうもんなのか?
よくわからないけど、すごいぞ、すごいぞ!
(やばい、涙腺が。なんか、おかしい)
そして
もう一度
それ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そのとき
ほんの1、2秒
無音があって
そして
「おぅうんぎゃあああああああああ!!!!!!」
泣き声だあーーーーーーーーー
担当医も助産師さんも口々に
「素晴らしい!あなたとっても上手ね!!!」
と妊婦さんを褒めてくれている
これが
赤ちゃんかあ~~~~
いや、知っているけど
産まれたての感じは知らなかったなあ
気が付けば
いきんでいたのはわずか「7分」だったそうだ…
すごい!!!すごすぎる!!!!
感動して
喜びと涙で飛び上がる
部屋の端っこにいる私
すごいぞーーーーーーーー!!!!
摘んだへその緒を切らせてもらったり
産まれたての体重を測り
日時を確認
どろどろの赤ちゃんが拭かれたあと
お母さんの胸でそっとうずくまっているのを眺めていたら
片付けがひと段落して
胎盤という名の臓器(もはや生肉という感じだったけど)を愛でて
出産というイベントはひと段落
先生は「上手だったわよ」とウインクをキメて
颯爽と去っていった(他の誰よりも一番関わる時間が短かったような気がする)
助産師さんたちも次の現場に行ったのか
一先ず僕らだけの空間が再び
(赤ちゃんと素肌をあわせる貴重な「スキントゥスキン」の時間)
とりあえず検査はまだだけど
今のところ五体満足
母子ともにすべてが順調のようである
興奮と
つい今しがた迎えた大イベントと
小さく埋もれている新しい命と
安堵による渇きや空腹なんかを徐々に感じながら
ゆっくり時間を使っていたら
気が付いた頃には
窓に
ビルの隙間から昇ってくる朝日が見えた
そして
考えていた名前候補たちを眺め
ミニ会議開催し、名前を本決め
いろいろなものが
カチッとはまった
日の光
士(さむらい)
心
偉大なボーカリスト
アルファベットのK
「こう」という音
強運の画数
こうしくん、君には
必要なものがもうすべて備わっているよ
(あと僕たちのアルファベットもね)
ようこそ
ぼくたちのもとへ

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