ペットボトル

冷蔵庫に

開けていないペットボトルのお水

ベランダで

ひとり

世の中や

日常を

すこしの間

思い返してみたり

噛み締めてみたり

そんなふうに

夜中過ごすことがある

その時ふと

階下に目が行く

マンションの前に

座っているひとがいる

普段

誰も座るような

用事がないような場所

女性のようである

誰かを待っているのか

ただぼうっと

何もしていないようにみえる

深夜の

側道をぬけるタクシー

利用者かな？

と思っているかのように

ゆっくりと

その女性の目の前を走る

しかし

タクシーを止めはしない

ただただ

座っているのだ

何人か人が

脇を通り過ぎる

みなさん

少しチラリと見るが

声をかけるわけでもない

なんだろう

終電でも逃したか

それとも

酔い醒ましでもしてるのか…

そう思いつつ

気にしないようにしていた

ところが

10分以上

その方はそこに座っている

（もしかしたらもっと長かったかも）

そこで30〜40分ほど経過して

僕は決めた

今マンションの前を歩いて

もしまだ座っていたら

水くらい

渡して

なにかに困っているのか

場合によっては

聞いてみるとしよう

そう決めて

マンションの下へ

いた

コンビニへ向かい

なんとなく

パンとお水

（渡さないとしても、明日の朝ごはんにすればいいし）

そう思って購入し

マンションの前へ

その女性に近づくと

彼女は

電話を耳にあてていた

無言のまま

それと

（泣いていた？）

少し悲しそうにみえた

そして

僕は声をかけず

素通り

電話中だったかもしれないし

もしももしも

電話をしているフリかなにか

していたのだとしたら

それは

酔い醒ましなどではなく

あそこに

座る理由が

あったに違いない

そう思い

僕は声をかけるのをやめた

翌朝

（当然ながら）

その方の姿はもう無かった

もしも

明らかに困っている人がいたら

そんなときに

手を差し出せるような

そういう人間でありたい

そういう社会であるといいなと

僕は思う

冷蔵庫には

空いていないペットボトルのお水